サプール、貧しくてもスーツでオシャレを競うコンゴ紳士の生き様がかっこいい!

2018/01/31

ポール・スミスの2010年春夏ロンドンコレクションはある男たちのファッションがモチーフでした。それはアフリカ・コンゴの伝統的なスーツファッションを嗜む紳士たちです。
コンゴ共和国やコンゴ民主共和国には、1920年代から続くファッション文化を受け継ぐサプールと呼ばれる紳士たちがいます。

サプールは、とてもダンディー且つエレガント!
色鮮やかな着こなしが特徴的で、世界一おしゃれで世界一見栄っ張りな男たち、世界一服にお金をかける男たち「サプール」とは一体どんな人たちなのか。NHK地球イチバンでお笑い芸人ダイノジの大地洋輔さんが取材していました。

サプールとは?

取材していた場所はコンゴ共和国の首都ブラザビル(Brazzaville)。
平均月給は日本円にして2万5000円で、3割の人々が1日の生活費130円以下で暮らしている貧困層だそうですが、彼らサプールは貧乏であっても服や靴に掛けるお金を惜しまず、本物のブランド物をも入手します。

人呼んで「世界一優雅な男達」。彼らはブランドの音を響かせながら服で競い合います。

サプール
Sapologie
SAPEUR

フランス語のSociété des Ambianceurs et des Personnes Élégantesの頭文字をとったサップ(サペー、SAPE)を楽しむ人のこと。
その人のこと自体をサップと呼ぶ場合もあり、日本語訳には「おしゃれで優雅な紳士協会」や、「エレガントで愉快な仲間たちの会」、「おしゃれで優雅な紳士たち」などがある。
コンゴ共和国は1880年から1960年までフランスの植民地支配下にあり、その時にフランス人の着ていたスタイリッシュで清潔感のある盛装に、独自の色彩感覚と感性を加えて昇華させたものがサップである。

必要になるスーツは10着

サプールになるには服を買うお金が必要で、仕事をしてお金を稼がなければブランド品は買えません。そのため、多くのサプールは休日である土日にだけ現れます。
そして歌舞伎役者のように大きな見栄をきり、とにかく気どって歩きます。ブランド物だとわかるように敢えてタグを見せびらかすのも彼らの流儀です。
たとえばこんな世界的に有名なブランドです。

How to Be a Great Sapeur

ずいぶんと高そうですが、どれくらいお金をかけているのか。
とあるトラック運転手は給料の40%以上を、自動車整備士は60%、洋服店経営者は50%などなど。
平均すると、支出の4割(38.5%)を衣服に費やしています。

国別、支出に占める服や履物の割合一覧表
順位 国名 比率
1 ロシア 9.17%
2 イタリア 7.02%
3 エストニア共和国 6.70%
28 日本 3.45%

出典:2012年OECD National Accounts

一着のスーツセットに380 ユーロ(日本円で5万円前後)かけます。多い人だと12着も持っている人もいます。

スーツのコーディネートは3色まで

彼らは派手な色を遣いながらも品良く見せます。三色以内が最もエレガント。例えば青色、白色、赤色の3つの組み合わせです。他にも、紺色、青色、水色の3色など、色相を統一したコーディネートなどがあります。

葉巻やパイプタバコに火は点けない

彼らは葉巻を咥えていますが、葉巻はとても高価です。これはプライドで口にくわえていて、葉巻に火を点けることはありません。

サプールの人々

サプールを取り上げたギネスビールのCM。日中の仕事を終えた後、シャワーを浴びてスーツをエレガントに着こなしたサプールたちは街に繰り出します。カッコよさがハンパじゃない動画です。

Guinness – “Sapeurs” (AMV BBDO)

電力会社で電気工事をしながら1人の息子を養うジョン・バレタ さん(32歳)の月給は3万円。

こんな人にだって楽しみはある。
サプールは個性と美的センスを持ち、暗闇を照らす明かりのような存在なのです。おしゃれをしてサプールになると日常生活の大変さを全て忘れるんだ。サプールになると別の精神が宿るんだよ。
服は自分自身を映し出す鏡。その人の内面までが透けて見える。

と彼は言います。彼はスーツを10着以上、ネクタイを250本以上所有しており、費用は総額300万円。給料の8年分に相当します。
ジョンには今付き合ってる彼女がいるそうですが、結婚資金が貯まらず再婚は当分先。それでもサプールはやめられないと彼は言います。

休日になり、朝の洗濯を終えたここからがその時間。
室温35度のなか、汗だくになりながら狭い部屋でコーディネートを吟味します。
流行にとらわれずに、色で遊ぶこと。無難にまとめるのではなくあえて柄物も上手に組み合わせそれでいてエレガントにまとめます。
彼はこのとき3時間もの吟味を重ねました。洗濯物はもう乾いています。

自宅で準備を整えると、いざ出陣。
近所の人達もジョンを見ようと道路まで出てきて、なかには総出で出てくる家族もいるほど、サプールは地元の英雄でありスターです。
ジョンも素通りはせずに、スコンテンという特異なステップの技を披露します。映画館もないこの街でサプールはエンターテイナーとしての役割も担っているのだそう。

職業や年齢にとらわれず、実にさまざまな人たちがサップを楽しんでいます。

エリ・フォンテーヌ

タクシー運転手。
葉巻は紳士のトレードマーク。服にお金を使いすぎて妻に逃げられた。


フェロル

消防士。スコットランドの民族衣装キルトでコーディネート。
好きな言葉は、人生なるようになる。金持ちの家に生まれなくても楽しみは自分で見いだせる。

プランス・アルメル

プロサッカー選手で隣国のガボンのチームに所属。
シーズンオフの二ヶ月間帰省してサプールを満喫。

マルセル・セリール

アーティスト。コンゴの国旗をテーマにコーディネート。
コンゴの誇れる文化を広めたいとサプールを題材に作品を作り続ける。

セブラン・ムエンゴ

セブランさん(59歳)は父に憧れて14歳でデビュー。内戦を体験した彼はサプールは絶対に戦ってはいけないと言われています。ナイフや銃を持ったサプールなど1人もいたことはありません。服こそが己を主張する武器です。と、暴力を振るわない紳士的な振る舞いこそがサプールのポリシーだと主張します。

1997年、与野党が分裂して政権の混乱から内戦が勃発。推定1万人なら犠牲者が出たと言われています。
内戦が起こっても彼はその意志を守ろうとしました。

彼は戦火を逃れるため、庭に深さ2 mも穴を掘って大切な衣服を埋めました。3日で帰るはずが1年後になり、掘り起こしてみるとボロボロ。諦めてそのまま服の墓場にしたそう。
戦争は何も生まず、大切なものを失うだけだと彼はいいます。

マキシム・ピヴォ(40歳)

スタイリストとして生計を立てながら無償でサプールを伝えています。
怯えたり悲しかったりしてはいけません。男として勇敢な振る舞いをするのです。と若者たちに教える彼にはテッド・ジャンヴィエ(22歳)という一番弟子がいます。
次の世代を担う若者に愛情を注ぎ、大切にするべき。といい、4万円もするイタリア製のスーツをプレゼントしてテッドをサプールとしてデビューさせました。

アラン・アクアラ・アチポ特別経済地域担当大臣

現役の大臣もサプールです。彼はこう言います。

サプールは芸術家です。好きな色を選ぶことで自由を表現しているのです。

写真集が発売

写真集「SAPEURS – Gentlemen of Bacongo」が発売されるとのこと。アマゾンでの発売日は2015年6月15日。

イタリア人写真家であるダニエーレ・タマーニが実際にサプールの中心人物達に会い、撮影したスナップと彼らへインタビューした内容で構成されています。