結婚式・披露宴のフォーマルなメンズスーツの正しい着こなし(男性の略礼装)

2017/08/27

結婚式や結婚披露宴に呼ばれたらどんな服装で行けばいいのか。スーツ、革靴、シャツ、カフリンクス、ネクタイなどの色、柄、スタイルに至るまで、結婚式の男性の服装一式について疑問だらけの人もいるのでは?

今回は正礼装(フォーマルウェア)や準礼装(セミフォーマル)は割愛して、略礼装(インフォーマル)についてのみ詳しくご紹介します。

タイトルで用途を結婚式に限定しているのは、多くの人が結婚式などの特別な行事でようやく"まともな"略礼装を意識するからです。

略礼装は結婚式に限らず、会社面接の服装、彼氏が彼女(恋人)の両親への挨拶に行く時、大事な人物との面会など様々なシチュエーションで重宝しますので覚えておいて損はありません。

何よりも新郎新婦に対する気持ちが大切

気休めとして先にオチを言ってしまえば、着ていく本人はアレコレ思案するものの、別にこれらを守らなくても誰も気に留めたり気付いたりしません。

これは、気付いても黙っているというより周囲の皆が正確なグローバル・スタンダード(世界的に正しいとされている様式)を知らないためと言えます。

しかし全員がそんな気持ちで式に出席し、サラリーマンの仕事中のような格好で集まれば、もはや会社の飲み会状態になってしまいます。

余計なお世話かもしれませんが、新郎新婦を思いやる気持ちが大事です。一人ひとりの新郎新婦への気遣いや振る舞いが、式の格式をより高めるのではないでしょうか。ユダヤにはこんな格言があるそうです。

人間は場面によって名誉が高められるのではなく、人間がその場面の名誉を高めるのだ。

Twitterユダヤの格言@Jewish_proverb

いい言葉じゃないですか。

今回はドレスコードについて全体的に少し厳しく表現しますが、これを守らないとNGというわけではなく、ドレスコードを正しく理解した上でならTPOや遊び心に応じて崩してもいいと思います。

いずれにせよ大切なのは、式に招いてくれたホストに対する気持ちだと思うのです。それを踏まえて読んで頂ければ幸いです。

スーツはシングルのスリーピースが基本

男性の略礼装なら、シングルのスリーピース・スーツ(三つ揃え)です。今の日本ではツーピースが間違いとまでは言えませんが、やはり正統派スタイルを目指すならスリーピースの方がいいでしょう。

ダボダボのスーツほどみっともないものはありませんが、最近流行しているようなウェストが締まった・お尻が出るくらい丈の短いピチピチした細身のスーツも礼装としてはイマイチ。

スーツは肩で着るをイメージしてください。攻めすぎは禁物です。

高い比率でのポリエステル混紡織物はテロテロ・ペラペラで安物の質感が漂うので避けましょう。

ボタンの留め方

2つボタン

常識ですが、2つボタンの場合は上のボタンだけを留めて、下のボタンは留めません。

3つボタン

3つボタンなら上2つを留めて、下の1つはやはり留めません。
ただし、ボタンを全て留めない状態で襟が大きく返って1番上のボタンが襟で隠れて見えない段返り(ローリングダウン)なら真ん中の1つだけを留めます

スリーピースならベストとのバランスもあるので2つボタンが一般的。

スーツの色と柄

略礼装のスーツの色はチャコールグレー、ダークグレー、濃紺といったいわゆるダークスーツ、もしくはブラックスーツが基本です。

真っ黒なブラックスーツでもダメではありませんが、ダークスーツの方が少し華やかなのでオススメ。

グレーやライトグレーはNG。柄は無地。
ピンストライプやストライプはNG。シャドーストライプも出来れば避けましょう。

ベストの色

ベスト(ウエストコート、ジレ)の生地や色はスーツの生地と同じである共地(ともじ, 共布)が基本。

ただし、午前中や朝の結婚式であれば、朝限定のモーニングスタイルとしてダークスーツにライトグレーのベストはOK。むしろ粋でカッコイイくらい

朝の服として着るモーニングコートやディレクターズスーツのグレーのベストと同様に、ダークスーツでも朝のグレーベストは認められています。ただしテカテカしていないマットな生地。

夜の結婚式ではグレーやシルバーグレーのベストはNG?という疑問があるかもしれませんが、分かった上ならアリだと思います。ただし上記の通り共生地が原則であり理想的。

持ち合わせの2ピース・スーツに、ベストだけプラスする際には共地で揃えるのは難しいので特に有効的な手法と言えます。
オシャレでワザと共地じゃなくて崩してるんだよって言っちゃえばいいんです。言ったもん勝ちです。

白襟(しろべり)の装着を推奨する人もいますが、海外からの国賓級の方はもとより皇族などの方を見てみれば判る通り、付けている人は見られません。昭和天皇は若い頃はつけていますが、白ネクタイと同じように明治維新後からの日本特有の古い慣習かもしれませんね。

ベストに襟(ラペル)があるものと無いものがありますが、これはお好み。私は襟の無い方がシュッとしていて好きです。

ドレスシャツ

イージーオーダーでいいので、デパート・百貨店などの紳士服店でドレスシャツを1着作ることをオススメします。スーツ量販店での購入はやめましょう。

百貨店なら量販店より金額が少々高くなるかもしれませんが、専門的な知識と丁寧な接客で満足のいく買い物ができることを考えれば安いもの。

○○○や○○○など近所のスーツ量販店に頼りがちですが、彼らは思った以上に素人集団。
凄腕の店員さんもたまにはいらっしゃいますがごく稀で、専門用語が通じない店員さえザラにいます。当たり外れが大きいので決してお勧めしません。これはシャツに限らずスーツにもいえます。

シャツの色と柄

シャツの色は白色が原則です。色物でも良いという人もいますがやめておきましょう。
やはり白の方がエレガントです。

シャツの襟(カラー

特に縛りはなく、ウィングカラーでもレギュラーカラー等でもOK。

ただしボタンダウンはNG。ウイングカラーならいつもと違う雰囲気を醸し出せます。ウイングカラーはもう古いと言う人もいますがそんなことはありません。

ウィングカラーがアスコットタイやボウタイ(蝶ネクタイ)専用のものだと思っている人もいますがそれは誤りです。普通のネクタイを締めてもOKです。華やかで、いつもと違う雰囲気を醸し出せます。

普通のシャツにアスコットタイはアリ?

アスコットタイに普通の襟の形をしたシャツを合わせるのはアリ?という疑問を持つ人もいるかと思いますがOKです

ただ、普通のシャツの襟だとアスコットタイの形状によっては干渉する場合があるので着けにくかったり不格好になることがあります。アスコットタイでウィングカラーのシャツを着るのは、その問題を回避するためです。
物理的な干渉が無く、格好良ければ着けてもOKです。

カフの種類

カフ(袖口)の種類はいくつもありますが、代表的なものをwikipedia先生に則ってフォーマルな順に並べると次の通り。

テニスカフス(正礼装的)

シングルカフのうち、ボタンが無くカフスホールのみのもの。本カフスともいう。スッキリとしていて最もフォーマル。

シングルカフ(準礼装的)

テニスカフスにボタンが1つ付いたもの。

ダブルカフス(略礼装的)

カフを折り返した袖口。ダブルカフスとシングルカフのどちらがフォーマルかについては諸説あるが、さほど差はなくどちらかと言えばシングルが格上。ダブルの方がいつもと違うドレッシーな雰囲気が出せるが、全体的なコーディネートとも相談。

コンバーチブルカフス

ボタンもあり、カフリンクスのためのカフスホールもあり、どちらでも留められるハイブリッド。普段も着れて実用的だが、ややフォーマルではない。

カフリンクスをつけるダブルカフスより、ボタンだけのシングルの方が格上?という疑問もあるのですが、カフリンクスを付ける方がエレガント。

手持ちで間に合わせたり実用面を考えるなら、少し劣りますがコンバーチブルでもOK。もしウイングカラーなどの普段使えないようなドレスシャツをオーダーするなら、テニスカフスかダブルカフスにすべき。

小物類

カフリンクス、チーフ、ラペルピンについてです。

カフリンクス

カフリンクスを装着するなら台座(土台)はシルバー(銀)かゴールド(金)。あまりに貧相なものなら付けない方がいいでしょう。

昼間のデザイン

白蝶貝を使ったデザイン。

夜間のデザイン

黒蝶貝か黒オニキスを使ったデザイン。

チーフ

チーフはネクタイの色と合わせたシルクの柔らかい生地が無難。堅い生地は折っても元に戻ろうとするので、差したチーフの形が崩れやすくなります。また、柄のチョイスによっては胸ポケットの裏地が出ているように見えるので注意!

ラペルピン

ラペルのフラワーホール(ラペルホール)には何も差さないこと。差すのはホストです。

ネクタイの色と柄

ネクタイの色は基本的にはシルバー系。柄は小紋柄やドット柄が基本。一般的なネクタイでもいいですが、モーニングスタイルとしてお昼の式ならアスコットタイもおしゃれです。アスコットタイは原則的には昼間の衣装ですが、夜も着用していいんじゃないかと個人的には思います。逆に、蝶ネクタイは夜だけのアイテム。
白ネクタイだけは絶対にやめましょう

レジメンタルストライプ(斜めストライプ)は避ける

レジメンタル・ストライプ・タイはイギリスの各連隊に伝わる連隊旗が由来で、今では同じ柄を締めることで大学やそれぞれの所属の一員であることを示すシーンで使われるものなので結婚式では避けましょう。ただし、朝に白黒縞模様のモーニング・タイを締めるのはOK。

ちなみに、日本では気にする必要はほぼありませんが、イギリスの植民地だった場所でこの柄のネクタイを巻くのは危険なので注意して下さいね。

ネクタイの結び方はこちらを参考にしてみてください。

https://tozanabo.com/archives/27567962.html

アスコットスカーフとアスコットタイの違い

日本でアスコットスカーフと呼ばれているものはアスコットタイの略式のもの。パーティなどでよく使われますがフォーマル度はアスコットタイの方が上。結婚式にしていくならアスコットタイにしましょう。

革靴はキャップトゥが鉄則

正礼装や準礼装の場合、昼はキャップトゥ(ストレートチップ)、夜はエナメルパンプスというように時間帯によって靴を履き替えなければなりませんが、略礼装の場合は昼夜問わずキャップトゥでOK。長所のひとつですね。

革靴には大きく分けて内羽根式(バルモラル)と外羽根式(ダービー)があります。
バルモラル=貴族の室内靴、ダービー=軍靴が由来で、礼装は例外なく内羽根式。そしてつま先に一文字(いちもんじ)の入ったキャップトゥでなければなりません。

居ないとは思いますが、茶色の靴、チャッカブーツ、ポストマン、ローファーなどは絶対にやめましょう。見る人が見れば恥をかくことになります。
プレーントゥも本来アウトですが、まだよっぽどマシです。

革靴の色と革質

色は黒。革は牛革のスムースレザーですが、キッドスキンやコードバンもありだと思います。

つま先をハイシャインにしたAldo Brue(イタリア)のバルモラルのキャップトゥ(キッドスキン)

つま先とかかとだけを光沢が出るよう綺麗に鏡面磨き(ハイシャイン)に。間違っても靴全体を磨いてはいけません。歩く動作で大きく伸縮する部分にワックスがついて固まると、動いた時にバキバキ割れます。

更に上品さを追求するなら次のようなものがオススメ。

  • ベビーカーフなどの若い牛革製
  • ブローグやメダリオン(穴飾り)がないもの
  • コバやヒールが小さいもの
  • 縫い目が見えないレベルソ仕上げ
  • ソールはカラス仕上げでないもの(底が真っ黒なカラス仕上げではホテルの絨毯が汚れるので、せめて土踏まずの部分だけ黒い半カラス仕上げにしよう)

まともな靴屋さんであればこれらの要望を伝えれば適合したものを勧めてくれます。ちなみに、スーツ量販店の○○○でこれらを尋ねたところ、そもそも話が通じませんでした・・・。