量産型ではない『本物』の日本刀の作り方
日本刀は昔から武器としてのみならず、その美しさから美術品としても世界的に認められています。
下に紹介する動画は少し長いですが、これを見れば日本刀の美しさ、伝統文化、卓越した匠の技に感銘を受けること間違いなし!
日本刀の製造は玉鋼(たまはがね)の精製から始まります。
- 西洋式の鉄
コークスを燃やす熱で鉄鉱石から精製した鉄。
コークスで鉄を溶かすと、温度が高すぎて鉄とリン・硫黄・マンガンなどの不純物が溶け合って品質が劣化する。
現在、日本刀を作るために供給されている玉鋼は、島根県にある日立金属の下請け会社が製造したもの。- 玉鋼
- 日本式の鉄
たたらを使い、砂鉄を炭火で製鉄した鉄。
日本式なら50 kgの砂鉄から15 kg~20 kgしか精製できないものの、不純物が少ない、中が錆びない純粋な鉄の精製が可能になる。
現在、一般的に流通している玉鋼は、日立金属の下請けが全国へ供給しているもので、たたら製鉄ではあるものの供給量や生産・採算性を重視しており、どの地域の刀匠が刀を作っても結局のところは同じ地金です。
現代刀の品質を超えて古刀に迫るには、最適な砂鉄を地域によって選りすぐり配合し、独自の玉鋼を使う必要があります。
そこで、備前長船の刀工の上田祐定さんは日本式のたたら製鉄を用いて、独自に玉鋼を精製するところから刀作りをしています。
- 日本刀ができるまでの動画リスト:1~8
日本刀は2層構造で、芯となる中心部分に心鉄(しんがね)があり、心鉄を挟むように皮鉄(かわがね)が外周を覆っています(甲伏せ)。
心鉄と皮鉄はそれぞれ別に鍛錬してから合わせます。
日本刀は熱した鉄を何度も折り返して鍛錬し、心鉄は7~10回、皮鉄は15~20回折り返します。
20回も折り返すと、2の20乗(2^20 = 1048576)と、100万以上もの薄い層の重なりとなり、これが仕上がった時の強靭な強さと、妖麗な縞模様として現れます。
日本刀造りの工程一覧- 島根県金屋子神社に参拝する
作刀前に参拝し、製鉄や鍛冶がうまくいくように祈願する。
- たたら製鉄
窯に砂鉄と炭を5分おき投入し、20分ごとにノロ抜きを繰り返す。これに8時間要す。
- ノロ抜き
炭火による低温で鉄以外の不純物が液体のノロとして融解して窯の底に溜まるので、これを抜き取る。
- ケラ出し
ケラ(玉鋼の塊)を窯から取り出し、熱いうちに半分に切り、水に付けて冷却することで表面に付着したノロを剥離させる。
- ケラを切る
加熱した玉鋼の真ん中にタガネで切れ込みを入れ、水で急冷させて2つに割る。
- 1つにまとめる
2つに割った玉鋼を再び1つにまとめる。
- テコ台に載せる
2つに割ったものを上下に重ねてテコ台に載せる。
- 沸かし付け
沸かし付けによって2つを接着する。芯までじっくり沸かす。
- 鍛錬する
- STEP1: タガネで切る
タガネで半分に切る
- STEP2: 水打ち
熱い玉鋼に少量の水をかけて、気化するときの水蒸気爆発のチカラで表面の不純物を吹き飛ばす。冷却が目的ではない。
- STEP3: 泥沸かし
酸化防止に灰汁(藁灰)をつけて、温度調整に泥を付ける。
- STEP4: 本沸かし
これらを繰り返して不純物を取り除きながら折り返し鍛錬をする。
この工程は心鉄で7~10回、皮鉄で15~20回繰り返す。皮鉄には炭素量の多い良質な玉鋼を使用する。
- 甲伏せ
心鉄に皮鉄を被せる。
- 沸かし延べ
心鉄と皮鉄を隙間なく合わせた後、灰汁と泥を付けて加熱し、叩いて延ばす。これを繰り返す。
- 素延べ
灰汁などを使わず、加熱と延伸を繰り返す。
- ナカゴ(中心)の形成
人力で叩いて微調整を繰り返して形状のムラを取り除く。
- 切っ先の切断
先端にだけ焼入れを行い、鉄の硬さや最終的な焼入れの温度を判断する。この時にできた断面には軟らかい心鉄が暴露していて切っ先に使えないので、最終的には形状の変更によって峰側となる。
- 棟区(マチ)の形成
- 棟打ち
刀の断面に対して長手に叩いて形状を整える。
- 刃の打ち出し
刀の断面に対して短手に叩いて刃を作り込む。刃を打ち出すことで鎬が形成される。
- 黒皮を取る
焼入れのために表面の酸化鉄(黒皮)を削り取る
- 土取り
粘土・炭・砥石の粉を混ぜた土で引土、足土、置き土を刀に置いていく。
この土取り次第で日本刀特有の縞模様や刀の反り具合が決まる。- 焼き入れ
730℃を超えて急冷すると硬くなる性質を利用したもの。
鉄の色で温度を見るため暗闇で行う。- 問い取り
- 姿直し
- 鍛冶研ぎ
- ナカゴ仕立て
- 銘切り
ここまでが刀工のお仕事です。
ここから先は研ぎ師、白銀師など、工程ごとにそれぞれ専門の匠が請け負います。
- 研ぎ師、白銀師・はばき師、鞘師、塗師、柄巻師、装剣金工たちの工程(文科省が製作した映像)
日本刀の職人たちVOL1~7
鞘に収められた刀身は、中で鞘に触れることなく浮いています。これも匠の業があってこそ。
昔の人たちは化学の概念がない中で経験則からここまでの工程を確立していたんですから驚きです。
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