卵アレルギー、乳幼児に生後6ヶ月から卵を食べさせると発症率が低下するとの研究結果
厚生労働省所管の国立研究開発法人である国立成育医療研究センターのチームは、乳幼児が生後6カ月から固ゆで卵を微量に食べ続けることで、12ヶ月(1歳)時点で卵アレルギーの発症率が8割も減らせるとの研究結果をまとめ、オランダの学術誌The Lancet(ランセット)に掲載されました。
ただし、同センターの大矢幸弘医長は卵の加熱が不十分だと危ない。必ず専門医に相談してほしい
とし、日本アレルギー学会の西間三馨顧問は画期的な成果だが、予防法として推奨するには、より大規模な研究を行い、効果を検証する必要がある
と指摘しています。
従来、食物アレルギーを発症しないための一次予防として乳幼児の離乳食の早期にそれらの食物を与えないことが推奨されてきましたが、これを覆す結果です。
論文は下記で参照できます。
背景
これまでは、乳幼児にアレルギーの原因となる食物を与えない方がいいとされてきました。
しかしこの研究結果によると、乳幼児期の早期にしっかり加熱した鶏卵をごく微量に摂取し続けた方が、食物アレルギーの一次予防の方法として尊重されてきた摂取の遅延よりも有益であることがわかりました。
鶏卵や小麦粉乳製品などが起因となる食物アレルギーの人口は正確には不明で、人口比で1~2%とも、3~4%ととも言われています。(乳児に限れば10%)
厚労省によると、アレルギーの原因食物は卵38.3%、乳製品15.9%、小麦8.0%で、この3種類だけで62.2%を占めています。
方法
方法は、無作為化、二重盲検のプラセボ対照試験です。
登録された被験者は生後4ヶ月~5カ月の時点で食物アレルギーを発症するリスクが高いアトピー性皮膚炎と診断された乳児のうち、在胎週数37週未満の子、鶏卵の摂取経験者や鶏卵の即時型アレルギー患者、それ以外の特定の食品の非即時型アレルギー患者、アレルギーの重篤な合併症患者などを除外した121人で、これを2つのグループに分けました。
1つは加熱した卵の粉末(黄身と白身)を食べる60人で、もう1つは偽薬を食べる61人のグループです。
生後6ヶ月から9ヶ月のうちは1日に50 mg(茹で卵0.2 g相当)を与え、それ以降は250 mg(茹で卵1 g相当)を与え、12ヶ月(1歳)の時点で7 gの粉末(茹で卵の約1/2個に相当)を与えて卵アレルギーを発症するかを調査しました。
- 無作為化
それぞれの治療群の質を同一に近づけること
- 二重盲検
被験者にも観察者にも試験内容を伏せること
- プラセボ対照試験
- プラシーボ対照試験
偽薬効果(先入観や思い込みによる差異)を打ち消すため、治験薬とそっくりな効用のない偽薬を比較対照するグループに与える試験方法。
調査結果
この結果、卵を摂取し続けたグループでの卵アレルギーの発症率が60人中5人で8.33%だったのに対して、偽薬のグループは61人中23人で37.70%となり発症率を約8割減らすことができ、重い副作用はありませんでした。
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