D-Wave社の量子コンピュータは「本物」!?アメリカの研究者ら「量子効果を確認」とネイチャーに発表!!
2013年6月28日、カナダのD-Wave社が開発し、販売した「量子コンピュータ」が本物である可能性が極めて高くなってきました。アメリカの研究者グループがNature Communicationsに発表した論文の中で、「量子効果を確認した」と主張しています。
もしこの論文内容が認められれば、これまで利用されてきた原理とは根本的に異なる「量子コンピュータ」と言われるコンピュータが既に商業的に販売されていることになります。量子コンピュータは従来型に比べて圧倒的に高速に特定の問題を解くことが可能になります。
2013年6月28日、南カリフォルニア大学のSergio Boixo氏とTameem Albash氏、Daniel A. Lidar氏らの研究チームがNature Communicationsに発表した論文「Experimental signature of programmable quantum annealing」の中で、D-Waveのコンピュータが古典力学に従うコンピューティングモデルではなく、量子力学的効果を使用していることが確認できたと主張しています。
今回の論文が他の物理学者達によって追認され、正しいことが確認されればD-Waveは世界初の量子コンピュータを開発、販売をしたことになります。
D-Wave社は2011年に同社初の128量子ビットのシステムの量子コンピュータ「D-Wave One」を発表し、米国最大の防衛産業企業ロッキードマーチン社との契約を締結しました。また2013年5月には機械学習を目的としてNASAとGoogleなどと購入契約を締結しています。
量子コンピュータがどれだけ凄いのか
n量子ビットあれば、2^nの状態を同時に計算できます。つまり今回テストに使われた8量子ビットあれば、2^8(2の8乗)=256もの状態を同時に計算。「D-Wave One」のフル稼働である128量子ビットあれば2^128(2の128乗)=340282366920938463463374607431768211456=3.4×10^36=約340澗(かん)となり、まさに天文学的数字を扱えることになります。ちなみに現在の最速スーパーコンピュータの並列度は2^20=1048576以下なので、現在のスパコンでは数千年かかっても解けないような計算でも、数十秒でこなすことができるとされています。
同時に複数の計算を行うことは組み合わせ最適化問題で効果を発揮します。例えばカーナビのルート検索、学校やプロスポーツ界の時間割や対戦の計画、生産能力の異なる工場の生産割り当て計画、運送会社や大企業の配送ルートや計画などなど。
主張するうちの1人、Lidar氏は「8量子bitを含む具体的なテスト問題を使用し、我々はD-Wave製のプロセッサは古典的アニーリングの予測とは矛盾する手順で最適化計算を実行することを確認した」と説明しました。
また論文第一筆者のBoixo氏は「私たちの仕事は、純粋に物理的な観点から見たとき、量子効果がD-Waveプロセッサでの情報処理においてある機能を持つ役割を果たしていることを示しているようだ」と説明しています。
この種のコンピュータは一般的な意味での汎用量子コンピュータとは異なりますが、量子効果を使用しなければ実現できないことから「本物の量子コンピュータの一種」として認められています。
これまで、学者たちの間では量子効果を古典力学的にシミュレートすることで何らかの高速化を実現しているのではないかという疑いを持たれていたという経緯があり、D-Wave社の製品が高速演算出来ているとの見解が研究者たちによって繰り返し発表されてきたものの実際に量子コンピュータであるか否かについて意見が分かれていました。
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