「水道水には一酸化二水素(DHMO)が含まれている」ラジオで警告した米ラジオDJに無期限謹慎処分
DHMOの分子模型
2013年4月1日エイプリルフール、アメリカ・フロリダのラジオ番組で2人のラジオDJが「水道水には『一酸化二水素』という化学物質が含まれている」とジョークで水道水について危険を警告したところ、水道局に問い合わせが殺到!同DJが無期限の謹慎処分を受ける事態となりました。
聞き慣れないこの化学物質『一酸化二水素』とは・・・
これは、人々が科学について適切に理解・解釈し、分析し、また記述・表現する能力「科学リテラシー」が低いことを利用した昔からあるジョークです。
DHMOの特徴は次の6点
- 物質名は『一酸化二水素(ジハイドロジェン・モノオキサイド: DHMO)』
- 水酸の一種
- 摂取しすぎると死ぬ恐れがある危険な物質
- その物質に完全に浸されると呼吸が妨げられる
- 溶媒や冷却剤などによく用いられる
- 常温で液体の物質
なんだかとても禍々しくてやばそうな化学物質名と特徴なのですが、化学式にすればH2O=水なのです。このジョークは、他の有害な化学物質に関する誇張された主張を皮肉る方法 として広く使われてきました。
一酸化二水素ジョークは、1990年にエリック・レヒナーと Lars Norpchen によって考えられ、1994年にクレイグ・ジャクソンによって改訂され、その後1997年にアメリカ合衆国アイダホ州の当時14歳の中学生だったネイサン・ゾナーが「人間はいかにだまされやすいか?」 (“How Gullible Are We?") という調査に用いたことがきっかけで世界中に広まったとされています。
上記のようにあえて分かりにくく解説したうえで、毒性や性質について否定的かつ感情的な言葉で説明をした後、「この物質は法規制するべきか」と50人に質問をしたところ、43人が「法規制すべき」と答え、回答留保をした6人を除いてDHMOが水であることを見抜いたのはたった1人だけだったそうです。
DJのふたりはこの一酸化二水素を取り上げて「地元の水道にはこの物質がいっぱい入っている」とリスナーに警告したところ、地元の水道当局には心配する電話が殺到。
地元新聞は「わたしの理解では、虚偽の水質問題を電話するのは重罪だ」という郡の広報担当者のコメントを引用して報道。ラジオ局は番組訂正を行って謝罪し、 ふたりのDJを無期限謹慎処分にしました。確かにこのジョークはエイプリルフールとして相応しいものではありませんでしたが、この出来事の背後にはジョークではすまない問題があります。
もし一般大衆が言葉に惑わされてこのような基本的な化学式さえも理解できないのであれば、複雑な用量関係や複数の要因が関わるようなもっと込み入った問題が理解されることに望みはないということです。
これは化学のみならず、政治経済・社会問題・ネットで出回るデマやそれらへの対応などありとあらゆるリテラシーに置き換えることができるのです。
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