若い血中たんぱく質は老化した細胞を復活させる能力を持つ
ドラキュラのように「若い生き血」を体内に取り込むことで身体が活性化するというのは架空の世界だけではなかったようです。
ハーバード幹細胞研究所(Harvard Stem Cell Institute)の研究チームによると、若いマウスの血中により多く含まれるたんぱく質「GDF11(Growth Differentiation Factor 11)」が脳神経や筋肉細胞の再生能力に影響を与えているといいます。GDF11は体内で生成され、年齢と共に減少するたんぱく質。
同大学の幹細胞および再生生物学のエイミー・ウェイガース教授(Amy Wagers)は2000年頃からGDF11に着目してこの研究を行っています。
2匹のマウスの循環系を接合する並体結合する実験
研究チームは2匹のマウスの腹腔を縫合して循環系を接合する手法「並体結合」を用いて実験を行い、若いマウスの血液が年老いたマウスの体内臓器に与える影響を検証。
並体結合自体は新しい手法ではなく200年近く歴史を持つもので、研究チームが生後3カ月と18カ月のマウスを結合したところ、年老いたマウスの筋幹細胞、肝臓、脊髄、脳細胞が再活性化。マウスの3ヶ月は人間の年齢で20~30歳に相当し、18ヶ月は56~69歳に相当します。
ウェイガース教授は「生物における若返り因子を初めて証明した」と語っています。
このGDF11についてはスタンフォード大学のトニー・ウィス=コレイ氏(Tony Wyss-Coray)らも実験を行っており、若いマウスから採取した血漿(けっしょう)を年老いたマウスに輸血するだけで記憶能力が向上することもわかっています。
Infusion of young blood recharges brains of old mice, study finds | Stanford School of Medicine
脳細胞も活性化して記憶能力が向上する
マウスの平均寿命の約半分にあたる生後15カ月のマウスの血管にGDF11を注入して変化を観察。1日1回の注入を1か月間継続したところ、脳内血管のボリュームが50%増加し、脳内幹細胞の数も29%増加。これは脳機能が向上したことを意味します。
また、同様の研究はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)などの研究チームが発表しており、2014年5月4日に英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に掲載されています。
GDF11を多く含む若い血は心臓や脳神経細胞・臓器細胞の再生に高い効果があることを示し、アルツハイマー病・心臓病・糖尿病・脳卒中・ガンなどの治療に役立つと考えられています。
外部関連記事
Young Blood Renews Old Mice | Science/AAAS | News
http://news.sciencemag.org/biology/2014/05/young-blood-renews-old-mice
Hope for aging brains, skeletal muscle | Harvard Gazette
http://news.harvard.edu/gazette/story/2014/05/hope-for-aging-brains-skeletal-muscle/
若い血液との交換で若返りが可能? | ナショナルジオグラフィック
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140506003
若い血液の輸血で認知機能が向上、マウス実験で確認 米研究
http://www.afpbb.com/articles/-/3014168?ctm_campaign=topstory
死にゆく人の血液のなかで起きていること
http://wired.jp/2014/05/05/telomere/
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