新国立競技場の予算がなぜこんなに膨らんだんか計算してみた
flickr:準建築人手札網站 Forgemind ArchiMedia
東京での2020年夏季オリンピック(東京五輪・パラリンピック)や、ラグビーワールドカップ2019に向けて建設計画が進んでいる「新国立競技場」。
しかし、世間を賑わせているのは「新国立競技場の建設予算がいつの間にか2520億円まで大幅に膨らんでいる問題」。なぜこんなに膨らんだのか、自分なりに計算してみました。
目次
1300億円が2520億円に増額した要因
当初の予算の1300億円がそもそも高いという問題もありますが、ここでは1300億円が2520億円になったことについて考えてみます。
ちなみに、政党の話が所々出てきますが私は支持政党無しです。
物価上昇だけで+25%。自民党のインフレターゲットは前年比+2%
ザハ氏が新国立改良案 首相に直談判、8月にも来日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150729-00000054-nksports-soci
自民党への政権交代時から7年として、物価は15%増。
1.02^7 = 1.1486 (=1.15)
民主党はデフレ時のインフレターゲットには反対なので、実質的にその差はもっと高く、15%でも過小に思える。
私がこの概算を出したのは2015年7月20日ですが、ツイッターでは更に詳細に調べて計算している人が現れていました。(2015年7月29日時点)
国家全体として物価上昇ではなく、建設物価指数での計算になります。
これによると、コンクリート(RC)で35%の上昇、鉄骨加工で50%以上の上昇が発生しています。
また、内装費についてはあまり上昇していませんが、そもそもスタジアムの内装費は全体に対して金額として小規模。
物価上昇について、センダガヤさんが根拠を出してくれないので、自分で探しました。 http://t.co/5BNeGEn3PU 建設物価指数のPDFのP40東京における主要細目の価格指数です。2013に比べコンクリ(工)で約35%、鉄骨加工で50%以上の上昇となっています。
— またろ (@mataroviola) 2015, 7月 29
日本全国でみると建設物価上昇は20%弱ですが、まず東京というポイントで行くと25%を超える。さらに今回の工種では躯体工事、コンクリートや鉄筋鉄骨の比率がどうしても上がる。そこでみると40%とか50%とかの数字が出ます。内装工事は落ち着いてますが、そもそもスタジアムでは内装が少ない
— またろ (@mataroviola) 2015, 7月 29
しかしザハがここまで手の内を晒す覚悟を示した事で、JSCや文科省は窮地に立たされるな。彼らはリーク情報のコントロール&日本側の業者は構造上黙っとくしかないという構造の中で、何とか世論を操作しようとしてきたワケだが、ザハが本気になれば色々彼らに不都合な情報が出てくると。
— 木曽崇:「日本版カジノのすべて」発売中 (@takashikiso) 2015, 7月 29
それらまでちゃんと分析したうえで、物価上昇分のコストアップの金額を出してほしかった。よくわかんないからデザインのせいにしちゃえ、みたいな発表の仕方になったから、世論のミスリードを引き起こし、政府が白紙にするって発表して、ザハさんが怒ってる。そういう構図となります、はい。
— またろ (@mataroviola) 2015, 7月 29
円安
当初の予算は1300億円=14.8億ドル(逆算した試算レート USD/JPY = 87.837)
2015年より、今後5年以内でドルが130円になるとして
1480000000*130 = 19240000000 (=1924億円)15%の物価上昇込みだと
1480000000*130*1.15 = 221260000000(=2213億円)20%の物価上昇込みだと
1480000000*130*1.2 = 230880000000(=2309億円)
もっと円安に振れたり物価上昇する可能性を考慮すると、2520億円はそこまでおかしくはないように見える。
また上記で触れたように建設物価指数は大幅に上昇していることから3000億円でも不思議ではないことが伺える。
消費増税+5ポイントで+117億円
1300億円の時点では消費税5%の計算だったが、2520億円というのは消費税8%での計算とのこと。
2520-(2520/1.08)*1.05 = 70
8%だと、5%時に比べて70億円の増加。これは一般的な建設予算の10%以上に相当。
消費税が10%なら
2520/1.08*1.10-2520 = 46.6 (2567億円)
更に47億円増加。トータルで117億円の増加。
しかし、消費増税については野田民主党の時点で決まっていたので、今更騒ぐのもおかしな話。(安藤忠雄が触れている1625億円に折り込み済みという話ならまだ分かる。)
動画
下の動画は、2015年7月16日のコンペの審査委員長を務めた建築家・安藤忠雄さんの記者会見の様子。
- 安藤忠雄はあくまで基本的にはコンペ審査のみ。
- 基本設計で相談があれば応じるはずだったが、相談はなかった。
- 屋根が後から追加されたという話もあるがそんなワケがなく、最初から織り込み済みで1625億円を想定していた。
まとめ
- やれ、JSC(日本スポーツ振興センター)が悪い、森元首相が悪い、安藤忠雄が悪い、色々意見が出ているが、結局のところ円安とインフレターゲットが最大要因に思える。
- 2520億円というのは確かに高すぎるけど、自民党政策下では別にそこまでおかしい数字ではない気がする。
- 2013年10月23日に下村博文(自民党)文科相が(最大)3000 億円と国会答弁したのはもっと円安や物価上昇が起こることを想定しての発言と思われる。(とは言え、さすがに3000億円はドンブリ勘定すぎると思う。)
- 検証すべき数百億円のちょろまかしがある可能性もあるけど、論拠がないのでここでは控える。
- 2520億円になったというのは自民党の政策通りの結果なので、自民党員、公明党員など与党やその支持者は「計算通り」といわないとおかしい。
- そもそも14.8億ドルが高すぎるので、それを批判するというのならまだ分かる。
- しかし、円安や物価上昇を標榜する政党を支持しておきながら、この予算の膨らみを批判するのはダブルスタンダードで馬鹿げてる。批判する資格無し。
- 自分の政策の結果なのに「白紙に戻す」と言ってる安倍首相も可笑しい。
- もしプランからまるまる白紙ならザハ・ハディドに失礼すぎるし、それこそ恥。
- 森喜朗会長「生牡蠣がドロっと垂れたみたい」←色々と失礼すぎ。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長と思えない発言。
- 政府は、どういう足し算で2520億円になるのかではなく、なぜ1300億円が2520億円になったのかをもっと具体的に、積極的に説明すべき。
- でもそうなると、今度は円安推進したことに矛先が行くので言えないのかな。
ディスカッション
コメント一覧
確かにドルベース固定として円安+物価上昇だけで2000億オーバーは確定ということになるなー
そもそも1000億以上の当初予算?がおかしい。
2012年7月〜9月の公簿期間でドル円為替レートが80円を上回ったことはないから、案を提出する建築家が想定し得るドルベースの予算は14.8億ドルどころか16.3億ドルぐらいあったろうしね。
今2600億という数字が出てますが、2013年9月の時点でゼネコンに見積もってもらったところ3000億になるというのを、削って2600億になったのですから、物価上昇は関係ないのではとおもいます。
とは言え安藤忠雄もかなり悪いと思うけどね~。
ザハデザインは今回の顛末の最大要因ではないけど、かといって要因ゼロでもないから。
ザハ使えば大体建設に苦労するし、大概初期見積り通りには絶対いかない。
これはほぼ事前に分かりきったことだし、分かりやすいほど前例がゴロゴロしてる。
安藤忠雄もザハ選んだ時点で、見積りが増えてくこともこういう問題が勃発するのも100%知ってた。
なのに、俺は知らなかった、選んだだけ、とか真っ先に逃げ打って、正直こんなにクズだったのかという印象しかない。
色んな要因が重なってこんな大騒ぎになったけど、発端はザハでいこうと決めた連中と、
全部予想済みでゴリ押しすれば何とかなると思ってた関係者全般、こいつらのせい。