警職法による職務質問は任意!拒否する最善・最強の応対方法を考察

2018/06/25

職務質問は、警職法(けいしょくほう, 警察官職務執行法)に基づいて行われています。つまり、警職法をしっかり把握していれば、自分の望まないカタチで警察官の言いなりにならずに済む場合もあるということです。この記事では具体的に法文を示して解説していますが、先に断っておくと私は法律を取り扱う業務経験者ではあるものの弁護士ではありませんので眉唾で読んで下さいね。

自分の身は自分で守る

職務質問の拒否について、必ずといっていいほど疚しく(やましく)ないなら答えたらいいじゃないかと言い出す人がいますが、この考えは非常に短絡的です。

例えば、用事で急いでいるのに職務質問されて、言いなりになって答えているうちに時間がかかり、それが原因で電車に乗り遅れたり試験に遅刻しても誰も補償したり責任を取ってはくれません。一応は国家賠償請求訴訟を起こせるそうですが非現実的です。
自分の身は自分で守るのです。とは言え、この記事で言えることは下記の3番に該当する場合くらいです。

  1. あなたが実際に犯罪を起こそうとしていて不審な場合
  2. 犯罪とは縁がないけど誰がどう見ても不審な場合
  3. 不審でもないのに職務質問された場合

なるべく協力する

まず第一に、職務質問に真摯に受け答えすること。次に、理由があってそれが無理なら手書きでもいいのでその場で名前、住所、連絡先を書いたメモを渡して今は急いでいるのでここに連絡して下さいと言ってその場を凌ぐこと。仮に会社の名刺を渡して、個人の携帯番号を添えたとしても警察が会社に直接連絡してこない保証なんて無いので、名刺を渡すのは避けた方が無難だと思うんですよね。

この記事では、それでもすぐに開放してくれない場合はどうするべきか?を考察しています。そんな事態はそうそう無いと思いますけど。本当に職務質問に遭いたくないのであれば、まずは職務質問されないような立ち居振る舞いと生活を送りましょう。

職務質問に関する記事は既にいくつもネットに存在しますが、こんな記事が上位にあり、目に留まりました。
しかし、はっきり言ってこのリンクの記事内容は馬鹿げていると思いました。

試験に遅刻するという、拒否する正当な事由がありながらもそれを主張せず、拒否する権利を行使せずに言いなりになって遅刻した挙句に、職務質問が拒否できるなんていうのは法律の建前だなんて。
この記事の筆者は弁護士だそうですが、法律家としての矜持・気概は無いんでしょうかね。

まずは音声録音や動画撮影を開始する

職質に応じるか否かは別として、まずは音声録音や動画撮影を開始するべきだと思います。 抵抗しただの、逃走を謀っただの、ああ言ったこう言った・・・後から何を勝手に付け加えられるか分かったものではありません。冤罪を防ぐためにも自衛の証拠を確保すべきです。

そして私なら、まず記録を開始して、それから警察官に録画・録音していいですか?と断りを入れます。こうすることで、録画に対する反応まで記録できますし、記録しているぞっとアピールすることで不適切な職務質問を行わないように牽制することができるのではないかと考えます。

しかも録画していいか聞いた時の反応まで記録することができます。

無断で記録していいの?

「待って、録音を始めてから”録音していいか”聞くの?相手に許可なく録画・録音したらダメなんじゃないの?」と思う人もいると思います。

でもそんなことありません。自衛のためなら無断で録画・録音しても、問題無い上に証拠能力があるんです。

例えば一番分かりやすい例はドライブレコーダーや防犯カメラです。事件や事故があった時に証拠として役立ちますよね。

他にも、ブラック企業のセクハラ・パワハラ、家庭内暴力などで違法性を問いたい時、上司に「録音していいですか?」って聞けるわけもないですよね。しかも上司が「いいよ」って言うわけもないです。それが通用するなら違法性を証明できなくなってしまいます。

もちろんそれが公開、相手の権利を侵害、利益が目的なら話は別ですけどね。

警職法第2条(第2項、)第3項により拒否します

先に言っておくと、私は警察官に職務質問された経験がありません。

もし私が職質を受けたとします。普段なら応じますが、理由があってどうしても断りたいのであれば次のように言うでしょう。

警職法第2条(第2項及び)第3項に基いて拒否しますここで職質されるのは私にとって不利です。かといって警察署や交番に行く気もありませんし強制もされないはずです、だから拒否します。という主張です。(怪しまれて余計に執拗になるらしいですが・・・。)

もちろん、こう言ったら確実に拒否できるというものではありませんが、頑なに拒否しますぅぅぅ!とだけ言い張るよりはいくらかはマシだと思います。
しかし、これも治安を守る警察官のお仕事なので可能な範囲で協力しましょう。

警職法はたった第8条までしかありませんから、まともな警察官なら一語一句覚えてなくとも、何条にどんなことが書かれているか概要くらいは知っています。
いや、公務執行の上で知っておかなければいけないハズで、知らないなら正に給料泥棒・税金泥棒です。

仮になんて書いてあるの?なんて聞かれたら私ならそれが貴方の仕事なのに知らないんですか?と返すでしょう。たった8条しかない警職法を"つまびらかに読んでいない"警察官にまともな質問や所持品検査=行政調査(任意調査)ができるとは到底思えませんし、本当に警察官なのかすら疑わしいです。

条文
(質問)
第二条  警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
2  その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。
3  前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。 警察官職務執行法 第2条
(意訳)

第2条
1項:警察官は不審者を発見した場合、疑うに足りる相当な理由のある者に対して職務質問することができる。

2項:警察官は次の場合、警察署、派出所又は駐在所に同行を求めることができる。

  • 本人に対して不利な場合
  • 交通の妨害になると認められる場合

3項:上記は(逮捕状が出ている等、)刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄拘束されたり警察署に連行されたり答弁を強要されることはない。

つまり逆にいうと、理由が無いなら警察官は職務質問してはいけないのです。

行政手続法第32条や第35条が使えないか考察してみる

上記で説明したように警職法第2条第3項により拒否しますと言うのが第一段階。
それでも食い下がって、解放してくれない可能性があります。
これは警察官による同条の違反に当たりますし、私なら同条に反しますと反論するでしょう。

しかしこのまま押し問答していてはラチが開かず、だったら最初から質問に応じればいいのにということになってしまいますし、この展開を狙う警察官もいるでしょう。

そこで、行政手続法が使えないか考察してみました。
ここからはちょっとグレーです。何がグレーかというと、定義上、職務質問が行政指導に相当するかという点です。しかし行政手続法3条1項13号を読む限りでは、職務質問は行政指導に該当すると考えられます。

もしこれが正しければ次のような主張ができることになります。

  • 行政手続法第32条に基づき、職務質問の応対を拒否します(後述
  • 行政手続法第35条1項に基づき、目的・理由・責任者の氏名と役職の提示を求めます
条文
(適用除外)
第三条  次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。 十三  公衆衛生、環境保全、防疫、保安その他の公益に関わる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導 行政手続法 第3条
(意訳)

第3条
1項:次の場合は行政手続法の規定(第5条から第36条の3まで)は適用しない。
13号:保安に関する事象が起こる可能性がある場合の現場において、警察官などによって行われる処分や行政指導。

条文
(行政指導の一般原則)
第三十二条  行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2  行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

行政手続法 第32条
(意訳)

第32条
1項:行政指導は相手の任意によって成り立つことを肝に銘じないといけない。

2項:行政指導する者は、相手が従わないからといって相手に対して不利益な取り扱いをしてはいけない。

条文
(行政指導の方式)
第三十五条  行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
行政手続法 第35条1項
(意訳)

第35条
1項:行政指導を行うものは、相手に対して次の点を明確に示さなければならない。

  • 趣旨(目的)
  • 内容(理由)
  • 責任者

しかし、行政手続法32条については、現場で完結するのであれば同法3条1項13号により適用出来ない、という風にも読めなくもないんですよね・・・。公益に関わる事象が発生し又は発生する可能性のある現場においてってことは、たとえあなたが善良で事件なんか起こらなかったとしても、警察官がお前は怪しい!だからここは公益に関わる事象が発生する可能性のある現場に相当すると言ってしまえば、そうなっちゃうじゃないですか?

確かに、もし本当に職務質問した相手が犯罪者だった場合は犯人:拒否します→警官:拒否されたら仕方ないというわけにもいきませんから、ある程度乱暴に扱っても許されるという理論は分かるのですが、もしそれが善良な市民に向けられた場合、市民の処遇が警官の良心に左右されるというのは不健全だなーと思うんですよ。目的達成のための警察比例の原則強制処分法定主義とで難しい問題だとは思うんですけどね。

警察署までご同行願えますか、と任意同行を求められた場合には行政手続法が使えるのではないか?

直前の話では現場で完結する職務質問なら行政手続法32条は使えない、つまり、現場から移動することになる任意同行なら行政手続法の35条は適用できるのではないかと思うんです。任意同行先の警察署や交番は現場ではありませんから。
その場合、私ならこう言うでしょう。

  • 行政手続法32条に基づき、任意同行を拒否します
  • 同法第35条(1項、2項及び)3項に基づき、(根拠となる法令の条項、規定する要件、適合する理由について)書面での交付を求めます
条文
(行政指導の方式)
第三十五条  行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2  行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。
一  当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二  前号の条項に規定する要件
三  当該権限の行使が前号の要件に適合する理由
3  行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
4  前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
一  相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
行政手続法 第35条2項
(意訳)

第35条
2項:行政指導する者が権限を行使する場合、相手方に次の事項を示さなければいけない。

  • 1号:権限行使の根拠となる法令の条項
  • 2号:その条項に規定する要件
  • 3号:当該権限の行使が前号の要件に適合する理由

3項:上記の内容について書面での交付を求められた場合、支障がない限り交付しなければならない。

4項:でも次の場合は交付しなくてもいい。

  • 1号:相手方に求める行為がその場で完了する場合(職務質問に応えてもらうとか、車のトランクの中を見せてもらうとか)

ちょっとややこしい表現ですが、要するにこうです。
職務質問に遭遇しただけではその行政指導が現場で完結するので第35条3項に基づく書面の交付は要求出来ない。ただし、任意同行を求められたら現場では完結しないので書面の交付を要求できる。

制止するために掴んできた警察官の手を振りほどいたりするのはダメ?

いくら断っても諦めてくれないというのは法に照らし合わせれば警察官が警職法第2条3項や行政手続法第32条1項に違反しているのではないかと思えるんですが、最高裁判例などによると以下の行為は法的に認められるといいます。(結構なんでも有りじゃん)

  • 引き止めるために腕をつかむ
  • 質問に応じるよう説得し続ける
  • 閉めようとしたドアを押し開け、足を挟んで閉まらないようにする
  • 自動車のエンジンを切ってエンジンキーを抜き取る
  • 質問途中で逃走を図った者の腕をつかんで停止させる

抵抗したら公務執行妨害で逮捕されるみたいな話も聞きますし、無理な動きはしない方がいいみたいですね。

警察官の立場になってみる

頑なに職務質問を拒否するのもいかがなものかと思いますが、それを頑なに止める警察官もいかがなものかと思います。
しかし、これは恐らくという想像でしかありませんが、職務質問を拒否する=怪しいというのはもとより、職務質問を拒否した者が犯行に及んだ場合、あの時お前が見逃したから~とその責任を問われることを恐れているではないかと思うんです。

つまり、解放してもらおうとするなら、警察官にこいつは解放しても大丈夫そうだと思ってもらえるような態度で臨むしかないということです。

とは言え、条項や法文まで持ち出して拒否しようとしている時点で、少なくともその警察官が想定しているようなタイプの不審者ではないと思うんですけどね・・・。

まとめ

もしもこれらの法解釈が全て正しいとするなら、正当な事由がある場合、私なら次の順で言うでしょう。

  1. 現場で完結する場合:警職法第2条2項及び3項により拒否します
  2. それでも解放してくれない場合:行政手続法第35条第1項に基づき、職務質問の趣旨・目的・責任者の役職と氏名を教えてください
  3. 任意同行を求められた場合:行政手続法第32条第1項に基づき、拒否します
  4. 更に任意同行を求められた場合:行政手続法第35条第3項に基づき、書面を交付してください

その場合、録画や録音を先に宣言した上でちょっと急いでいるので3分以内でお願いしますとか時間を先に決定した方がいいかもしれませんね。
ちなみに、自ら職務質問を受けに行こうと試みた顛末を記事にした人もいます。凄い勇気だ・・・。